ケツの汚い日本人-------2

本題の前に怒りのカンボジア


さて、生活物価の安さが、カンボジアでの暮らしやすさの大きな要因、と言ったが、それは、そのまま、仕事の報酬にリニアに帰ってくる事に、カンボジア暮らし2年目くらいから、実感として 感じてきた。
当たり前、と言われるかも知れないが、それを忘れていた。平和ぼけかな。

日本で同じ仕事をこなせば、最低でも10万円、トータルでコーデイネイトすれば30〜50万円は確実な仕事が、正に1/10で済んでしまう。
それがカンボジアの現状です。いや、それでも「高いなぁ」と言われてしまうのだ。
「高いなら、他でやってちょ。」
殿様商売の筆者は、平気で断った。
すると、本当に他で済ませてしまうのも、カンボジア流だった。
観念して、多小の安さ(半端じゃない安さだが)は我慢して、仕事をすると、今度は支払いが大幅に遅れる。しかも、平然と
「ないから、払えない。」
至極当然の資本主義の理論だが、金額は200ドルとかの、決して大金ではないのにだ、
安い上に、支払いを平然と遅らす、中華系人間の感覚は、少し感動した。

「そうか、ないから払えない。実に単純だが重要な事だ。」
つたない、日本での経験からいくと、支払いはきれいにするのが商売の原則と思い込んでいた。
実際、日本ではそうだ。報酬を安く済まそうと思ったら、支払いだけはきれいにする。それがなければ、仕事をする意味がない。こう考えていた。おそらく、大部分の日本人は、原則はこれだ。
ところが、ガイジン達は違う。

ヤツらは小学校で「必殺の支払い遅延マニュアル「その1」〜「その200」」を学んでいるとしか思えないくらい、徹底している。
とにかく
「仕事は安く、速く。支払いは、遅く、少なく。」
だ。
仕事が終わった後でも、平気で値切ってくる。
「てめえら、学校で習わんかったんか、ウソつきは泥棒の始まりと。」
「ウソはついてない。金がないから、もう少しまけてくれと言ってるだけだ。」
とくる。
「まけたらいつ払うんだよ?」
「来週払う」
200ドルが180ドルになっても、どうでもよくなって承諾する。
「サンキュウ。あなたの事はすごく感謝してる。」
なんて、もう一件落着のように喜んで、手を握ってくる。
「ばかやろう、まだ終わってねえわい!」

さて、その来週になり、朝一で支払いの催促の電話をすると、
「オウ、ソーーリィ(妙にーが長い)。今日は現金が無くなったから、2日後に電話くれないか。」
出ました、必殺の支払い遅延マニュアル「その10」くらい。
その手は桑名の焼き蛤としぐれ城?だ。
「ノウ!!(鼓膜が破れるぐらい大きな声で)、今払わなければ、お前のノートブックを頂く!!ばかやろう!(これ日本語)」
「オオ、怒らないで聞いてくれ、ミスター。実は夕べ、、、、、エイゴデドウタラコウタラ、ワイワイ
「シャラップ!ナウ、アイムゴーツーユアオフイス!あんど、ノットペイマニー イズ アイム テイク ユア ノートブック!!ジャスト、ウエイト フオウ ミー!!(ガチャン)」
もう、やくざのなぐり込みだ。金額の大小じゃない。
「なめてやがる!あの、つるはげチャイニーズ野郎!」
相手の事務所へマシンガンでもぶち込んだルか、という勢いで、乱暴にドアをあける。
つるぱげチャイナはもっともそうにケータイでなんか喋ってる。
そのケータイをバシットと取り上げて
「ナウ、ビジー!アフターコールバッ!」
と勝手にスイツチを切ってやる。
「おい、ブリング ディス ノートブック だ、ユー ゴー アウト!!あっちいけ!!」
ケータイを叩き返して、英語だか日本語だか訳わからず、怒鳴りまくる
こっちの怒りに負けてか、経理みたいな小娘が、怯えながら、ようやく小切手に180ドルと書いて 渡すのに5分とかからなかった。やりゃできるやないか、ぼけぇ!
ばかやろばかやろう!イフ ザ チエック クドント ユース、アイム バック アンド キル ユゥ !!」
受け取りのサインなんかせずに、剥げチャイ野郎の事務所を後にした。

こうまで苦労して得た金額はたったの180ドルだ。
カンボジア人には大金だが、こちとら、家賃で消える金額だ。

という風に、実に心が荒んでいくのを我ながら感じていた。
あんな剥げチャイ野郎の仕事をしたのが、そもそものミステイクだなと、反省もした。
しかし、日本のように道徳を厳守するという最低限のモラルが存在しないのが、日本以外の国だ。

支払いが遅れるのはもちろん、途中で仕事が止まる事も多々ある。
レギュラー仕事で暮らしているわけでない、一介のデザイナーにとって、結果として、手許に現金が入る時期が遅れるのが何より痛かった。そのぐらい、生活もギリギリで回転しているからだ。
そんな、どうにも成らずにイライラしながら過ぎる日々を、本当に"救ってくれる"のもカンボジアだ。

その日、手許の現金が5ドルを切っていた。案の定、予定していた支払いが一日二日と遅れていた。銀行預金もゼロ。クレジットカードは使えない。そんな、最悪のピンチ状態だ。

外国暮しで、便りになるのは"パスポート"と"部屋の鍵"と"現金"だ。これを三種の神器といっても過言ではない。
住み慣れた日本なら、親もいれば兄弟もいる、学生時代の友人だっている。が、ここはカンボジアだ。それらは一切カンボジアに存在しない。あげくに、三種の神器のうちの"現金"が5ドルとは、 我ながら史上最悪のピンチだ。
入金があれば数百ドルが手に入り三種の神器が埋まるのに、----

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